更新日:2026年10月01日
乳がんは、乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管という母乳の通り道に発生します。日本人女性のがん発生率は乳がんが一番高く、8人に1人がかかるとされています。もっとも多い年齢は40代から50代とされていますが、発見が遅れる20代から30代の患者数も年々増えてきているのが現状です。また、乳がんは男性にも発症しますが、全乳がんの1%未満となっています。
乳がんの発症リスクの要因には、加齢、女性ホルモンへの長期間の曝露、初経年齢が早いこと、閉経年齢が遅いこと、出産・授乳経験が少ないこと、肥満、飲酒、運動不足などがあります。また、家族に乳がんになった人がいる場合や、BRCA1・BRCA2などの遺伝子に生まれつき変化がある場合は、発症リスクが高くなります。一方で、これらの要因がなくても乳がんになることはあります。そのため、原因を完全に予防することは難しく、定期的な検診による早期発見が重要とされています。
乳がんの自覚症状で最も多いのは、しこりの自覚です。乳房にできるしこりの多くは良性で、しこり=がんではありません。乳がんを疑う目安として、次のような特徴があります。
しこりの触れ方は、深さや乳房の厚みによって大きく変わります。深い場所にあるものや小さいものは、触ってもはっきりしないことがあります。
乳がんのしこりが皮膚近くにできると、皮膚が引っ張られくぼみやひきつれが生じることがあります。必ずしもくぼみ=乳がんとは限りませんが、乳がんの可能性を示す重要なサインです。
引きつれだけの症状の時は、静脈炎などの一過性の他の病気の可能性もありますが、引きつれやくぼみの下にしこりを触れる時は、乳がんの可能性が高くなるため、このような症状がみられた時は乳腺外科を受診してください。
黄色、白、透明で量も少ない場合は心配ないことがほとんどですが、授乳期でもないのに分泌物を認める場合、特に片方の乳頭から血液(赤や黒っぽい)が混じった液体が出る場合は、乳がんの可能性があります。
乳がんが進行すると、乳房の形状の変化や、左右の乳房の大きさが不均等に感じることがあります。左右差自体はよくあることで多くは問題ありませんが、短い期間で急に左右差が現れた場合は注意が必要です。
また、乳頭の陥没や、乳頭の向きが変わることも乳がんの可能性を示す症状です。乳頭の真下やすぐ近くにできた乳がんが大きくなることで周囲の組織を巻き込み、その結果乳首が内側から引っ張られて凹んだり向きが変わったりすることがあります。
胸の張りは主に生理周期や妊娠・出産に関連して起こり、通常は心配ありません。また、痛みの原因の多くはホルモンバランスの影響によるものです。ただし、乳房痛の中に乳腺炎などの治療が必要となる場合や、多くはありませんが乳がんが見つかる場合もあるため、症状が続く場合や他の乳がん症状も重なって見受けられる場合は受診をおすすめします。
乳頭は下着などとの刺激や蒸れた環境によって皮膚の炎症を起こすことがあります。乳頭や乳輪の皮膚にぶつぶつができたり、ジュクジュクしている場合、皮膚そのものの病気のことが多いですが、乳がんの場合もありますので検査が必要です。
乳房に熱感や赤みなどの炎症を疑う症状がみられた時は、ほとんどが乳腺炎か乳腺膿瘍などです。しかし、炎症性乳がんという乳房の皮膚に炎症を引き起こす稀ながんがあり、この場合は乳房が赤く腫れ、皮膚が浮腫んでオレンジの皮のように硬くなるのが特徴で、乳腺炎のような痛みも伴います。炎症性乳がんは進行が早いため、これらの症状がある場合はすぐに受診してください。
乳房が全体的に硬く感じる場合、乳腺症という女性ホルモンの変化に伴う疾患で起こることが多く、経過観察でよい場合もあります。しかし、乳がんの中にはしこりが周囲の組織を巻き込んでいき、乳房全体が硬く動かなくなることがあるため、通常とは異なる感触が持続する場合には、検査をおすすめします。
乳がんが進行すると、がん細胞がリンパ節に転移することがあります。特にわきの下にしこりや腫れが持続する場合は、乳がんの転移なども疑われるため、すぐに検査を受けていただく必要があります。
その他、乳房周辺の違和感や、食欲不振や体重減少、極度の疲労感の持続などの全身症状が乳房の異常と併せて現れた場合は、念のため受診をおすすめします。
乳房の自覚症状(しこり・腫れ・分泌物など)の有無、乳がんのリスクを高める要因(遺伝要素・出産授乳歴・既往症・生活習慣など)について重点的におうかがいします。また、使用中のお薬、月経の状態、生活に関連すること(仕事・嗜好品など)もおたずねします。
問診の内容は、乳がんの診断と治療を行うときの大事な情報となりますので可能な限りお答えください。
乳房の形や左右差、皮膚の状態などの乳房の見た目を確認し、乳房に異常(しこりや硬さ、分泌物など)、わきの下や鎖骨周辺のリンパ節に異常がないかを触れて調べます。
乳房を圧迫し平たく薄く引き伸ばした状態で、乳房を上下方向と斜め横から撮影するレントゲン検査です。被ばく線量はわずかで安心して検査を受けていただけます。
また、マンモグラフィ検査は、女性放射線技師がお声がけしながら進めさせていただきます。
乳房の内部に超音波を送り、反射してきた情報を画像化して行う検査です。この検査には痛みも放射線被曝も伴いません。乳腺が発達している若年層の女性や、マンモグラフィでは検出が難しい病変を見つけることに適しています。
視触診やマンモグラフィ、超音波検査を行った結果、悪性が疑われる場合や判断の難しい場合に行われます。
細い針を病変部に刺し、吸引して細胞を採取したり、乳頭からの分泌物を採取してがん細胞の有無などを調べます。
乳房の病変周囲の皮膚や組織に局所麻酔をして小さく切開し、ボールペンぐらいの太さの針を刺して病変部の組織を採取します。細胞診より採取する組織量が多いため、がんについてのより正確な診断が可能です。
強い磁気と電波を使って乳房の状態を画像化して診断する検査で、乳房にできた腫瘍と正常な乳腺組織とを鑑別できます。乳房型にくりぬかれたベッドにうつ伏せになって撮影し、乳房を挟まないので痛みはありません。また、検査着を着たまま受けられ、放射線被ばくもありません。
乳がん術後の経過観察や再発を疑う場合などの検査で用います。
乳房の外見と機能を保ちながら、がんの周囲の正常な組織も含めて切除し、見た目の変化が軽度になるように行う手術です。多くの場合、放射線治療を組み合わせて局所再発を予防します。
がんが広範囲に広がっているなど乳房温存手術の適応にならない場合に、乳房のふくらみすべてを切除する手術です。
センチネルリンパ節は、乳房内からのリンパ流が最初にたどり着く腋窩リンパ節のことで、乳がん細胞が最初に転移しやすい場所とされます。このセンチネルリンパ節に転移がなければ、それ以外のリンパ節への転移の可能性は低いと考えられますので、乳がんの手術中にセンチネルリンパ節を摘出して、転移の有無を評価する検査をセンチネルリンパ節生検と言います。転移がなければ、腋窩リンパ節郭清をせずに済むので、腕のむくみなどの合併症を防ぐことができます。
わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)をすべて切除する手術を言います。従来の乳がん手術では腋窩リンパ節郭清を行うのが一般的でしたが、腕のむくみやしびれ・挙上困難などの合併症が発生しやすいため、現在は手術前の検査で腋窩リンパ節への転移が見つかった場合やセンチネルリンパ節生検で転移が見つかった場合に行われる方法です。
乳房全切除後に自分の組織や人工物を用いて失われた乳房の形をもとの形に近づける手術です。乳房の形を再建することで「女性らしさ」を取り戻すことができます。
当センターでは、形成外科と連携し乳房再建術が可能です。
乳房全体に放射線を照射し、がん細胞を死滅させます。温存術後の乳房に放射線を当て再発を予防します。また、乳房全切除術後でもリンパ節転移がある場合に放射線治療を用います。
一般に抗がん剤を点滴で投与する治療で、がん細胞の遺伝子や細胞増殖機能などを障害して死滅を目指します。化学療法が必要かどうかは、乳がんの性質(タイプ)と進行度などの再発リスクで決定します。
抗がん剤の毒性は正常細胞にも同じように作用しますので、様々な副作用(脱毛・吐き気・下痢など)を引き起こしてしまいます。しかし、正常細胞はがん細胞より抵抗力があり回復力も強いので、正常細胞が耐えられる範囲でがん細胞を死滅させられる量の抗がん剤が投与されます。
乳がんの多くは女性ホルモンの刺激を受けて増殖します。そこでその女性ホルモンの分泌や働きを阻害することでがん細胞の増殖や転移を防ぐ治療法です
がんの発生や増殖に関わるたんぱく質などのさまざまな分子を狙い撃ちして、その機能を抑える薬物療法です。
私たちの体に備わっている免疫細胞を利用してがんを抑制する治療法で、乳がんにおいて主に使用するのは「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる薬剤です。
がん細胞は、免疫細胞にブレーキをかけ攻撃を逃れようとする性質があります。免疫チェックポイント阻害薬は、そのブレーキを解除して免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにするお薬です。
乳がんの術後10年間は、定期検診をおすすめしています。
乳がんは、他のがんよりもがん細胞の増加が緩やかな傾向があり、5年経過した後でも再発する可能性があります。そのため、安全を考慮して術後10年以上は定期的な受診・検査をご案内しています。
術後5年間はおよそ半年に1回、その後は1年に1回の定期検診が推奨されます。