放射線治療は、手術、化学療法(抗がん剤)と並ぶがん治療の3本柱の一つです。単独で行うことも、組み合わせて行うこともあります。1日に10分程度の放射線治療を毎日数日間繰り返します。通院できる体力があれば、外来通院や働きながらでも治療できるのが特色です。
今まで蒲生地区近隣には放射線治療ができる設備がなく、ご不便をおかけしていました。このほど東近江市と医療法人社団昴会が協議を重ね蒲生医療センターに放射線治療センターを設立し、安心・安全な高精度放射線治療を地域住民に提供できることになりました。
高いエネルギーのX線や電子線を体の外から照射してがんを治療する装置のことです。この装置は、電子を高速に加速して得られる高いエネルギーのX線や電子線を利用しています。この放射線を多方向から正確に照射することでがん治療が行えます。
放射線治療は、通常、月曜日から金曜日までの週5日間を数週間かけて実施します。疼痛緩和目的の1日で終わる1回照射から、前立腺癌では40回近く照射する場合など様々です。
当センターが導入したエレクタ社製放射線治療装置Versa HDは、最新のコンピュータ技術を搭載し、デジタル技術を基に放射線を制御して安全に高精度かつ短時間での放射線治療が提供可能な装置です。
さまざまな照射技術と柔軟な治療選択が可能で、単純な照射から高度な照射、IMRT※、SBRT※にも対応しており、放射線治療の多様なニーズに応えられ全身に適用できます。
最新のIGRT※の機能を搭載しており、正確な照射治療を行うことが出来る装置です。
※用語解説は下段にて
エレクタ社製放射線治療装置Versa HD
以下は、放射線治療の標準的な流れです。
※上記は一例です。すべての患者さんに当てはまるわけではありません。
IMRTは、多方向から放射線に強弱をつけて照射し、がんに放射線を集中させる照射法です。
従来の強弱をつけない照射方法と比べ、病変部位に対して同じ放射線量を維持しながらも正常臓器への余分な被ばくを避けられます。また、VMAT(回転型強度変調放射線治療)の導入によって照射時間が短くなり、長く寝台に固定されずに済み、患者さんへの負担を軽減します。
角度によって放射線量を変え腫瘍に集中的に照射
IGRTは、照射ガントリーと一体化した画像誘導、X線撮影装置によって2次元画像、または3次元画像を撮影し、その画像に基づいて照射を行う毎に患者さんの体位や臓器等の位置のずれを確認し補正を行うことでより正確な照射が行える照合照射技術です。
紫:治療計画時 緑:治療直前
(目的部位に合わせて寝台を動かして照射します。)
紫:治療計画時 緑:治療直前
体幹部の病変部位に対して3次元的に多方向から放射線を高精度に照射することにより、周辺臓器の正常な組織への影響を抑えながら照射する技術です。
照射中、患者さんの動きや臓器の体内移動を抑制するために体幹部用の固定具(シェル、バキュームクッション)などを用い、透視や呼吸同期などを行い照射することがあります。
SBRTの主な適応疾患は、肺がん、肝がん、脊椎および傍脊椎領域の少数遠隔転移性の病変部位です。
※原発病巣が直径5センチメートル以下であり、転移病巣のない原発性肺がん、原発性肝がん又は原発性腎がん、3個以内で他病巣のない転移性肺がん又は転移性肝がん、転移病巣のない限局性の前立腺がん又は膵がん、転移性脊椎腫瘍、5個以内のオリゴ転移及び脊髄動静脈奇形に保険適用されます。
放射線治療では、病変部位への線量集中とその周辺組織の保護が非常に重要です。
マルチリーフコリメータは、高精度放射線治療を行うために必要不可欠な装置で、病変部位への線量集中、正常組織への線量低減などを行う照射範囲を調節する装置です。
当院の放射線治療装置では、高精度マルチリーフコリメータを搭載しており、放射線治療の多様なニーズに対応しています。
マルチリーフコリメータ 赤枠:照射する放射線量を調節する部分